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続編 第三章 嫉妬しちゃう心7

last update Last Updated: 2025-01-19 18:00:57

仕事から帰ってきて夕食の準備を終えて私はソファーに腰を下ろした。

大くんが帰って来る時間が近づいてくると、そわそわする

スマホを持った。

大くんと顔を合わせるのが気まずくて玲に会えないかメールをするも駄目だった。千奈津も予定があった。

――大くんに会いたくない。

二十時になり私は頭を冷やしたいと思って外に出た。と言っても、外は蒸し暑くて汗が出てくる。しばらく歩いてスマホを家に置いてきたと気がついた。

「連絡できないや……。今、何時なんだろう……」

長い時間歩いた気がする。

それでも帰る気になれずに歩き続けた。

すると、一台の高級車が止まった。窓が下がり声をかけられる。

「あれ、美羽ちゃん?」

「あ、赤坂さん……」

芸能人オーラが漂っている。サングラスを外して私を見つめる。

「こんな時間に一人で何やってんの?」

「……いろいろありまして」

「大樹は?」

何も答えずにいると赤坂さんは察したように微笑む。

「喧嘩?」

「私のワガママなんですけど」

「マジ? 話聞いてやるか。とりあえず、夜に一人でふらついてると危ないから乗って」

「ありがとうございます」

普段は男の人の車には乗らないけれど、赤坂さんはCOLORのメンバーで信じられるからと乗せてもらうことにした。

「で、大樹には外出してくるって伝えてあんの?」

首を横に振る。

「マジ? すっげぇ心配するぞ」

「どうでしょうか……」

車をしばらく走らせると赤坂さんが提案してくる。

「話聞いてやるけど、車の中だと雑誌に撮られるかもしれないから俺の家来るか?」

「えっ?」

肩を震わせて笑っている。

「悪いけど親友の女を襲うような悪趣味なことはしねぇーから」

その言葉を信じて赤坂さんの家にお邪魔させてもらった。

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  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第二章1

    美羽side結婚パーティーを無事に終えることができ、私は心から安心していた。 私と大くんが夫婦になったということをたくさんの人が祝ってくれたのが、嬉しくて ありがたくてたまらなかった。 しかし私が大くんと結婚したことで、傷ついてしまったファンがいるのも事実だ。 アイドルとしては、芸能生活を続けていくのはかなり厳しいだろう。 覚悟はしていたのに本当に私がそばにいていいのかと悩んでしまう時もある。 そんな時は大きくなってきたお腹を撫でて、私と大くんが選んだ道は間違っていないと思うようにしていた。自分で自分を肯定しなければ気持ちがおかしくなってしまいそうになる。 あまり落ち込まないようにしよう。 大くんは、仕事が立て込んでいて帰ってくるのが遅いみたい。 食事は、軽めのものを用意しておいた。 入浴も終えてソファーで休んでいたが時計は二十三時。 いつも帰りが遅いので平気。 私と大くんは再会するまでの間、会えていない期間があった。 これに比べると今は必ず帰ってくるので、幸せな状況だと感で胸がいっぱいだ。 今日は産婦人科に行ってきて赤ちゃんの性別がはっきりわかったので、伝えようと思っている。手作りのケーキを作ってフルーツの中身で伝えるというささやかなイベントをしようと思った。でも仕事で疲れているところにそんなことをしたら迷惑かな。 でも大事なことなので特別な時間にしたい。

  • 秘めた過去は甘酸っぱくて、誰にも言えない   完結編・・・第一章16

    「そんな簡単な問題じゃないと思う。もっと冷静になって考えなさい」強い口調で言われたので思わず大澤社長を睨んでしまう。すると大澤社長は呆れたように大きなため息をついた。「あなたの気の強さはわかるけど、落ち着いて考えないといけないのよ。大人なんだからね」「ああ、わかってる」「芸能人だから考えがずれているって思われたら、困るでしょう」本当に困った子というような感じでアルコールを流し込んでいる。社長にとっては俺たちはずっと子供のような存在なのかもしれない。大事に思ってくれているからこそ厳しい言葉をかけてくれているのだろう。「……メンバーで話し合いをしたいと思う。その上でどうするか決めていきたい」大澤社長は俺の真剣な言葉を聞いてじっと瞳を見つめてくる。「わかったわ。メンバーで話し合いをするまでに自分がこれからどうしていきたいか、自分に何ができるのかを考えてきなさい」「……ありがとうございます」俺はペコッと頭を下げた。「解散するにしても、ファンの皆さんが納得する形にしなければいけないのよ。ファンのおかげであなたたちはご飯を食べてこられたのだから。感謝を忘れてはいけないの」大澤社長の言葉が身にしみていた。彼女の言う通りだ。ファンがいたからこそ俺たちは成長しこうして食べていくことができた。音楽を聞いてくれている人たちに元気を届けたいと思いながら過ごしていたけれど、逆に俺たちが勇気や希望をもらえたりしてありがたい存在だった。そのファンたちを怒らせてしまう結果になるかもしれない。それでも俺は自分の人生を愛する人と過ごしていきたいと考えた。俺達COLORは、変わる時なのかもしれない……。

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